告知の通り、クラシコム社長の青木さんからのお誘い&デジカル社長の香月さんのご協力により、Eコマースについての座談会に出演してきました。
gdgdなところも多かったから、UST配信した番組をご覧いただいた方は、いまいち消化不良だったと思います(すみません)
割と良い話もあったと思うのですが、ちゃんと整理しておかないと消化不良のままになってしまいそうなので、話したこと・聞いたことををフジイなりの再整理しておきますです。
北欧のオサレでシャレオツな雑貨を販売するクラシコムはASPを使った独自ドメインでのECと楽天への出店を平行している企業だそうです。
青木社長によると、ECに対して(漠然とした)行き詰まりを感じているとのこと。
昔からある通信販売の時代と変わらず、健康食品とか冷凍カニとかみたいな、目の前の売上を出したい事業者が手をだす商材が未だに幅をきかせているらしい。
青木さんの感覚では、小規模EC事業者は、広告費を大量に投下すれば売上になるような商材で、広告と値下げ勝負だけの世界になっている気がしている。
(冷凍カニの広告は核爆弾とか言うらしいw)
顧客とのコミュニケーションを大切にしたり、ビジネスを育てるという点でいうような流れにはなっていないとのこと。
それに対して河野さんは、そんなにECに大きな問題や限界は感じていないとのこと。
もちろん100%満足はしていないけれど、それはECに限った話じゃなく、何だって100%満足なんてないというのと同じ。
『注文したら物が届く』という自動販売機的なものとしては今のECは(100%でないにしろ)ある程度、お客様のニーズには応えているのでは?・・・と、河野さん。
僕(フジイ)としては、河野さんの顧客視点の意見に同意しつつ、最近の動向から行き詰まり感を感じるという青木さんの事業者視点にも共感する感じです。
僕が、今後の流れとして注目しているのは「AMAZONのモール化」です。
最近のAMAZON(co.jpの方ね)はマーチャント(出品者)を探すことに注力しています。AMAZONの中で出品するだけではなく、倉庫や物流などもAMAZONに委託することができます。
出店企業に物流サービスを提供することについては楽天も対抗してきているものの、楽天とAMAZONには大きな違いがあります。
「AMAZONのブランドを使える」ということです。
楽天で出店した場合、多くの購入者は出店している『○○商店』の名前やショップページ・商品ページの雰囲気を見て「ここで書いたいか」を検討します。
しかし、AMAZONは1商品1ページであり、それに出品者がぶらさがるという構造なので、AMAZONに「出品」することはできても「出店」することはできないようになっています(出店者のページも持てるけど、それは出店とはいえないと思う)
(余談ですが、上記のようなシステムだから、商品マスタは最初に登録した出品者のものがベースに使われるんですよね。そのため数十万点の商品マスタを持っているような大手事業者をとりこむ「商品マスタ狩り」を絶賛開催中だったりします。この話はリクエストがあれば、よりちゃんと書きます)
さらに近未来的を想像します(予測じゃないから外れたらゴメン)
SEOの牽引によって、ページ内のどの部分が品名・品番・価格を示しているかなどをタグ付けするような流れが強まって、ショップページを訪れなくても検索結果に商品が表示されるようになるのは有りそうだなーと思っています。
Google Commerce Searchの一般開放というわけですね。
(いまは通常検索結果には反映しません)
ちなみにGoogle不動産もこの流れに近いものを感じています。
そして、その後は検索結果から直接Google Chckout(Google提供の決済サービス)で購入できるようになる、と。
これは特商法などクリアすべきハードルがありますが、技術的にはすでに可能になっているわけですよね。
極端にいえば、「どの店で買うのか」を選択しなくて良くなり、買い手はGoogleから、Amazonから購入する(実際は違うけど)感覚を持つような流れになっていくのではないかと。
Googleが実際にこういう動きをするかどうかはともかく、AMAZONを起点にした「出店」から「出品」への流れは、止まらないのではないかと考えています。
これはEC事業者にとっては恐ろしいことです。
お客様が「商品」だけを見て、「店」を見ないとしたら、価格と到着日数以外では何も差別化することはできなくなってしまう。
(いまでも価格コムがありますが、店を完全に見なくなるようなシステムではなく、どちらかというと価格を中心に「店を比較する」システムであると言えますから、この流れとは違うと思っています)
もちろん、安く販売しているところを探しまわらなくても安く買えるようになるのは素晴らしいことだと思います。
しかし、この流れが加速すると薄利でも耐えられる小規模販売者だけしか生き残ることができなくなり、利益を「より良いサービス」のために再投資したいと思っても、それをすることが適わなくなっていくのではないでしょうか。
お客様が安価を求めるとは当然のことですが、再投資やサービス維持とのバランスは、崩れていってしまうのか・・・
(この話に対して、河野さんから『さらに言うと、薄利で耐えられる小規模販売者だけになったところを、AMAZONが自社仕入れに切りえて総取りすることができる』という恐ろしい指摘も。あくまで「それもできる」ってだけの話ですけどね)
青木さんの感じるEC事業者としての行き詰まり感っていうのは、こういった「お店」の価値が薄まっていっていること、事業者として「できること」が狭くなっていっている感じのことを言っておられるのだと思います。
「ドンキホーテ」に対して好き嫌いはあると思いますが、好きな人は、売っているモノよりも「お店」に価値を感じているのではないかと思います。
雑貨屋さんが好きな人は、雑貨屋巡りという「行為」に楽しみをもっていたりします。
僕と青木さんの共通認識として、理想のECを語るときに「お店の価値」や「買い物という行為の楽しさ」は、なくてはならないものだというものがあります。
買い物をするお客様にとっては「安心できるところから、安いものがすぐ届く」が一番のサービスでしょうから、売り手側の視点はあることは理解しています。
ただ、販売側が利益の再投資をしてサービスを育てるようなことをしなくなる世界をお客様が望んでいるとも思えません。。。
最初に書いた河野さんの言葉「何だって100%満足なんてない」という真実からすれば「安いものが早く届くだけ」に不満を感じる人たちもいるわけで、その不満足を埋めるECやビジネスモデルを構築していくのが良いのかもしれません。
もちろん事業者の規模やステージによって「出店から出品へ」の流れに乗っちゃうのもアリでしょうし、その流れは止まらないと思っています。
乗っかった先には何があるのかなあ・・・って話はありますけど。
僕としては「同じ本を買うなら、そこらへんの本屋よりもヴィレッジバンガードで買うとなんか"良い買い物"をした気分になる」とか、そういう、魅力のある『お店づくり』が必要なんだと思うんですよね。
たとえばブックオフオンラインの「オトナ買い」とか「中古の本が指定した価格になったらメールが届く」なんていう機能には、ただ便利とかいうんじゃなく、『ブックオフらしい』とか独自性を感じることができると思うので、そういった方向性に『お店を作るように』ECも進んでいければいいなあというのが(この時点での)僕の結論です。
(あ、これ機能やシステムの話ではないですからね)
・・・と、いう風に総括しようと思ったら河野さんがこんなツイートをしていた。
こんな長々書いたのに、ひとことでマトメられちゃったよw
流石です・・・
いいお店はネットもリアルも関係なく、顧客の心をわしづかみ しちゃうと思う。みんなでそんなお店を増やしたいね。 http://ustre.am/:BPxL
ホスピタリティとか、商材とか粗利とか、色々な質問もあったんだけど、長くなったから割愛させていただきます。
そのうち書くかも(←書く書く詐欺w)
おまけ:
いやー、まあ、なんつーか。
「徹子の部屋」みたいな感じの立派なセットまで用意してもらっちゃって、音声さん、ADさんまでいる配信スタジオにビビりまくって、ちゃんと喋れませんでしたよ・・・orz