僕はいまの会社を作る前はバイク業界にいました。
自転車じゃなくてモーターサイクルの方。
で、先日に前職のころからのお付き合いの方と会ったときに「フジイさんに聞きたいんだけど、自動運転車が当たり前になったらバイク(モーターサイクルの方)はどうなっちゃうと思います?」と質問されました。
これ、素晴らしい問題提起だなーと思うので、これについてちょっと考えてみたいと思います。
ちなみにモーターサイクルの方って書くの面倒だから本稿におけるバイクは自転車ではなくモーターサイクルのことだと思って読んでください。
さて。
もしも本当に完全自動運転(レベル4)の自動運転が当たり前になる世界が来るなら――本当にそれが来るなら、だけど――どう考えても自動運転車とバイクが共存ができるとは思えない。
わざわざ自動車(四輪)ではなくバイクに乗るのは、バイクならではの操作感・乗り心地を楽しむために乗っている。
バイクを自動運転化した場合は、乗る楽しみもない異常に不便な乗り物ができあがってしまうから、完全自動運転(レベル4)のバイクを作る理由はない。
というわけで、完全自動運転(レベル4)のクルマが普通になったら、マニュアル操作のバイクは交通社会で邪魔者・排除されるべきものになる可能性が高いのではないかという話があります。自動運転車側から見たら邪魔なノイズになりますからね。
なので、「自動運転車が当たり前になったらバイクどうなっちゃうと思います?」という質問は素晴らしい問題提起だなと思ったわけです。意外とここらへん語っている人は少ないし。
とはいえ。
とはいえ、ですよ。
前提が違うと話にならないので説明するけれど、これは高速道路だけではなく一般道も含めて完全自動運転(レベル4)のクルマばかりになった場合を想定しての話なんですね。
本当に完全自動運転(レベル4)の自動運転が当たり前になる世界って来るのかな。
いや、そりゃいずれはそうなるんだろうけど、僕が生きてる間にそれ来るのかなーという風に疑問に思っています。
なんか自動運転の話って5年~10年レベルで一般道も含めて完全自動運転(レベル4)のクルマばかりになるかのように語られていたりしませんかね?
実際はそんな(レベル4の完全自動運転ばかりになる)状態になるのは何年後なんだろう。
ある自動運転の記事によれば80年後くらいとあります。
80年もかかるかどうかわからないけど、僕はの感覚でも二十年以上はかかるだろうなあと思ってるし、もしかしたら僕が生きてる間にそんな世界は来ないかもと思っている。
これは機械的な技術の問題ではなくて、人間社会がどのように受け入れていくかって話。
ドライバーが主体で、機械が補助的な自動運転ができる「レベル2」だと、どうしても高速道路などに限定した機能となる。
これから期待されているのが自動運転が主、人間が一部を補助する「レベル3」。 完全自動運転のレベル4はまだ遠い…
日本政府や各メーカーは2020年までに高速道路に限定しないレベル3自動運転車の実用化を目標としているんだけど、あと3年で法整備とか、倫理まわりとか、一般道での安全性の確保とか間に合うのかしらね…。
正直なところ高速道路での実用化ならともかく、一般道での実用化とか間に合う気はしないんだけど、仮に間に合ったとして、人間が一部を補助する「レベル3」の場合は緊急時やシステムの限界時にはドライバーのマニュアルに切り替わるので自動運転中でもハンドルを握って前を見ていないといけなくて、事故時の責任は従来の車と同じようにドライバーとなる(ということになっている)。
あと、2020年時点のレベル3だと人間がマニュアル操作しないといけない状況も多いと思いますんで、内容的にも夢のように語られている「自動運転」とは違う感じになるんじゃないかな。
一般道の渋滞中とかに自動運転になれば嬉しいけど、緊急時はマニュアル操作が必要だからハンドルから手を離せない的なものなら、渋滞中でもずっとハンドルにぎって周囲を気にしていないといけないわけで、自動運転に任せることはできないんだろうしなあ。
この時点では、バイクが邪魔とか言う以前に「自動運転車って邪魔」という感じになるんじゃないですかね。
実態として割と広めの40km/h制限の道路を40km/hで走行しているクルマはあまりいないわけで、自動運転車が法定速度で走ってたら邪魔になるだろうし…。そういうわけで2020年時点に本当に一般道走れるのかは疑問であります。技術的にじゃなく、交通社会にフィットさせられるのか問題をあと数年で解決できるのか的な意味で。
限定的な台数を限定的なエリアで走らせるくらいはできるかもしれないけど。
で、自動運転車が多数になってきたら「マニュアル運転車って邪魔だな」ってなるタイミングが来るんだろうけど、そんな簡単にリプレイスされないんだよね。
自動運転車でもエコカー減税みたいなスクラップインセンティブ(国が行う古い自動車の廃車から新車に移行させるための優遇策)を行うんだろうけど、まあ過去の例なんかからして古い車の税金上げることはできても禁止はなかなかできない。10年じゃ入れ替えなんて不可能だろうなあという気がします。
もしかしたら、スマホがガラケーを駆逐したような速度で入れ替えが進む可能性もゼロではないけれど、自動車の場合はなかなかそうもいかないのではないでしょうか。
さすがに2040年くらいになったらレベル4の完全自動運転ばかりになっていて欲しいという気はしますが、さすがにそんな先のことって誰にも分からんですよね。
国交省が2016年現在走っている車を20年ちょいで禁止するとも思えないなーという感覚はありますが。
自動運転が爆発的に普及して、マイノリティ化したマニュアル運転車やバイクとの事故が社会問題にでもなれば、それらの公道走行を禁止する法律ができるかもしれませんが、2050年くらいまでかかるのかな。わからんけど。
そもそも、そのころのバイクメーカーって何を作ってるんでしょうね。
実はこっちの方が問題なんじゃないか。想像つかないし。