「仕組みで解決する」とはどういうことか

このブログでも、ぼくのTwitterでも「仕組みで解決していくしかない」とか「マネジメント頑張る」ということをよく書いているのだけど、あるとき「仕組みで解決ってどういうことなんですか?」と質問されてハッとしたことがあります。今日はそのことを書いていこうと思います。

そのひと曰く、仕事上の問題は個人ごとに感じ方や問題の観点、解決したいやり方が違う。だからその個人個人の感じるポイントややり方に合わせて個別具体的に解決していくものではないか、仕組みで解決なんてできることは少ないのではないか、と。

仕組みで解決というものに対して懐疑的というかむしろ否定的な人は多いなあと感じてはいたけれど、この質問をもらったことでそう感じる人が多いのは何故か、どう説明すべきかをより深く考える良い機会になりました。質問してくれたひとありがとう。

今日は「仕組みで解決する」と何が良いのか、「マネジメント頑張る」というのは何を頑張るのかを書いていきたいと思います。

 

「仕組みで解決する」とはどういうことか

あるチーム内に、ある実務に関するベテランがいたとします。
経理担当でもいいですし、ソフトウェアエンジニアでも営業でもいいですが、現場のことをよく知るベテランみたいなイメージで捉えてください。

その人は確かに仕事ができてチームを支えているけれど、ことあるごとに「このチームのここが問題だ」「業務が上手く回っていない」と不満を撒き散らしており、周りはその人のネガティブな感情に振り回されるので不満の爆発が鎮まってくれるように気を使ったり愛想笑いをしながら耐えて、ストレスを溜めている……。

 

本来、業務に不満を持つことは課題の発見なので素晴らしく良いことであり、解決できる仕組みとセットになることでチームはより良くなっていきます。

しかし、この例のように仕組み/マネジメントで解決することができないチームでは、このベテランが業務上の課題を発見しても解決する方法を与えられることもなく、そのひと個人の特性であると捉えて感情を鎮めようとします。
説明するまでもないでしょうが、発見した課題は解決されません。ネガティブなことを言う面倒な人をどうにか落ち着いて欲しいという不快だけを個別に解決しようとしているからです。

仕組み/マネジメントで解決することができないチームでは、課題を発見できる力のあるひとも「余計なことを言って怒ってばかりいる人になる」か「愚痴る人」になるしかなくなる

あくまで仕組みでされる例のひとつでしかありませんが、個別対応ではなく仕組みで解決するということが感覚でも理解できるのではないでしょうか。。

 

「発見した課題を解決する仕組みを作るだけ」を本当にやり切れるか

「仕組みで解決する」するとして、具体的にどうすれば?というのはどうしたら良いかは「発見した課題を解決する仕組みを作るだけ」なんですが…

  1. 課題を共有する仕組みを作る
  2. どう解決するか(または解決しないなら何故か)を決める仕組みを作る
  3. 決まった内容や理由をチームメンバーに共有する仕組みを作る
  4. 決まった内容をスケジュールにそって実施する仕組みを作る
  5. 実施結果を振り返って、改善する仕組みを作る
  6. 上記の1~5を止めない。止めさせない。徹底的にやり切る。

すでに仕組みが運用されているチームなら楽勝ですが、仕組みがないチームでこれを定常的に回るまでやろうとすると、業務が物凄く増えたように感じるし、ルールも増えるし、そのルール通りに動けない人のフォローにかかる手間は相当なものになります。

課題を解決したいとは思ってはいるが大変すぎて取り組みが自然消滅したり、個別の解決しかないと考えてしまうのも分かります。

こればかりは本当に「仕組みで解決していくしかない」し「マネジメント頑張る」しかないのですよね、止めない。止めさせない。やり切るしかないのです……。

 

信じるための情報を持っているかどうか

必要なことはその仕組みを信じるための情報を持っているかどうかなんじゃないかと思うのですね。ただ信じると言っても気持ちとか根性の話ではなく「この仕組みで解決することは組織に必要であり、実現可能であり、絵空事ではない」というロジックをちゃんと組み立てるという意味です。

現代だと、良いチームがどんな取り組みをしているかなどの情報を得ることができますよね。書籍でもインターネットでも共有されている情報が沢山あります。

それにより「自分たちで実現可能であるか、絵空事ではないか、取り組む価値があるか」とロジックを組み立てることができますし、チームメンバーに苦労をかけてでもやることだぞという強い意思を得られるのだと思います。その知を信じて頑張るべきことを止めない、というのが大事なのかなと。

 

それこそ生産性を上げるチャンスを失っているのでは?

冒頭で書いた「仕組みで解決ってどういうことなんですか?」と質問してくれた人が「個人個人の感じるポイントや課題感の大きさに合わせて解決していくものではないか」というのも、仕組み化ではなく個別・個人ごとの対応をしたときの成功体験があるからなのかなと思います。

人それぞれ感じ方が違うのだから個別対応がベストなのである、という観点は現代においてもまだまだ多いようにも思いますが、しかし個別・個人ごとの対応を積み重ねていくことでチームが生産性を上げるチャンスを失って現状維持を強化することになるんじゃないかな、とぼくは思うのですね。

「人はそれぞれ違うから同じルールを当てはめるのは違う」というのも決して間違った考え方ではないですし、ぼくも全てを仕組みやルールにすべきであるとは思いません。ただ、「人はそれぞれ違うから同じルールを当てはめるのは違う」という観点だけでは失われるものがある、という話なのです。

仕組み化すべきことと個別具体で解決すべきことを切り分けていく、それがマネジメントがやるべきことなんじゃーないでしょうか。

 

余談ですが、もしこの記事が面白いと感じたらこっちもあるよ

余談ですがこの問題について「ビジョナリー・カンパニー」を書いたジム・コリンズも、チーム内の不快の解決について面白いことを書いているので、いま読んでもらってるこの記事を読み終わったあとに ↓ こっち ↓ の記事も読んでもらえたら嬉しいです。

fujii-yuji.net

 

以前からこのブログ「フジイユウジ::ドットネット」を読んでいる方は年2回くらいしか更新されないことをよくご存知だと思うのですが、今月は毎日更新しようというチャレンジをしております。

いままで年2回更新だったんで引きこもりの人が急にフルマラソンしているみたいになっていて、更新4日目にして本当に月末まで走りきれるのか不安になっているのですが、できるだけ頑張るので読んだ感想をツイートしたりブックマークコメントを書いたり記事の感想つきでシェアしたりしてくれると更新するエネルギーになります。

どうぞよろしくお願いします。

 

余談その2

このツイートは1年前ちょい前のものなんですが

やっと書けました(どんだけ遅筆なんだ)