マッチングで解決するという思い込みだとか、ディレクションの重要性だとか。

タイトルにも書きましたが、世の中で求められているのはマッチングよりもディレクションなんじゃないかなーという話を書いてみようと思います。

僕の会社でははイラストやラフ画などを元に衣服やバッグの製造ができるSTARtedというサービスを運営しています。
本来は発注側にも専門知識が求められるアパレルの物づくりを誰でもできるようにしたいと考案したものです。

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知識がない方でもアイディアとデザインさえあればブランドを作れますし、ゲームやアニメ関連などの事業会社の担当者さまから「こんなもの作れますか…?」といった風にグッズのオーダーがあったりもします。

こんな感じの説明をすると「工場とのマッチングサービスですか?クラウドソーシング?」と聞かれるのですが、そうではありません。

ロゴを作りたいとか、印刷をしたいみたいな単一タスクならマッチングとクラウドソーシングでも割と機能するのですが、「衣類やバッグを作る」といった複雑な工程の場合に必要なのはマッチングではなくディレクションだと考えているからです(言うまでもありませんがロゴ製作や印刷はディレクションなしで良いという意味ではありません)。

サービス運用負荷はマッチングの方がはるかに楽だしコストもかからないのですが、ディレクション抜きでは機能しないのでSTARtedの場合はお客様が作りたいアイテムのディレクション、つまり製品仕様の要件定義から調達・製造ディレクション、スケジュール管理などは全てSTARtedがとりまとめて行うようにしています。
(STARtedの場合は、そこを機械的な要素と人間的な要素の両方で対応しています。運用負荷を考えると全て機械にやらせたいとも思うけど、やはり人間の目は需要なので。)

これは衣類やバッグを作る場合に限らない話のようで、大手クラウドソーシング2社を見てもディレクションも含んだプランが出てきているようですし、知人のライターさんも編集や監修の仕事が増えたと言っていたりしますし。

そんなわけで、衣類やシステム、コンテンツ製作などもそうですが、発注要件をまとめること自体に経験や知識が必要な内容だと、ディレクションが非常に重要になってくるのだと思います。

また、アパレル製造やシステム開発など、その業界のプロトコルといえるような「仕事の進め方」にそって動けるかや「業界標準的なドキュメント」を用意できるかなどが重要で、それができない相手から仕事を受けるのを嫌がる企業が多いので、そもそも発注主の都合に合わせてマッチングしても、受注側が断ってくるなんてことはザラにあるわけですからマッチングが機能しないことの方が多いように思います。

また、マッチングといっても、たとえばSTARtedの提携工場は400くらいあって、雑に説明すると下図みたいな感じになっています。

アパレルのものづくりは分業化されていることが多いので、お客様(ユーザー)の作りたいアイテムに合わせて「このアイテムなら生地はここで手配」「こういうテイストのものは、このパターンナーが得意」「この仕様だと、工場Aの設備では無理だから工場Bで裁断して、工場Cで縫製、プリントは工場Dで、仕上げ加工は工場E」なんていう風にアイテムや条件に合わせて工場群の中から一番適切と思われる職人さんや工場が選定されていきます。

マッチングすること自体にディレクション視点がないと難しいわけです。

検索をはじめとして様々なインターネットサービスのおかげで、割と単純なマッチングだけで解決できるようなものごとの多くは(インターネットが普及する前に比べて)簡単に解決できるようになりました。

それもあってか解決されていない問題に対して『マッチングさえ何とかすればどんどん問題解決される』と考えている人が結構いるように見えます。特に新規事業のサービス設定とかするときに安易に「マッチングすれば~」なんて言ってしまいがちではないかとかとか。

しかしそれは違うと思うのですね。
2016年でも解決されていない(一見マッチングの問題に見えるような)課題のほとんどは単純なマッチングでは解決しづらく、ディレクションを主に考えないと解決できないことが多いのではないかと僕は考えています。衣類やバッグを作りたい人と工場を直接つなげても解決できない(ことが多い)ように。

もちろんディレクションも万能ではありませんが、ディレクションとマッチングをセットにしないと解決できないことが増えてきて、ディレクションの重要性がどんどん増しているような気がします。ディレクションとマッチングをセットにして運用するのはそれはそれで大変だけどね。