ホスピタリティという名の保身


ひとつ前のエントリで、ビジネスを足し算・引き算で考えるって書いたんだけど、そんなん当たり前じゃ!って言われそうだから、そういう風に考えられない人の実例も書きます。

足し引きではなく、自分が保身に走っていることに気づいていない人とビジネスを進めると困るという例なんですが、実際に僕が経験したこと。



あるサービスを提供したら、数千人単位でお客様が殺到した。

それは予想済みだったのですが、金銭的にも人員的にもリソースがギリギリだったので、マンパワーで乗りきることにしたんだけど、一緒に企画をしていた人から、こう言われた。

お客様から苦情をいただくくらいなら、お客様が殺到しないサービスに変えよう
もうね、あほかと。バカかと(死語)

そりゃあ、苦情がこない体制を整えるのが企業として100点満点だとは思うけど、現実にそうできない場合が多いし、それが普通。

殺到している数千人が喜んでいて、数人が苦情を出すという状況なのであれば、その数人に100点の体制を作れなかったことを、適切に、丁寧に、心から、お詫びするしかない。僕は今までそうしてきたし、多分これからもそうする。

それによって掛け替えのない数人を失うリスクもあるんだけど、そのリスクをとらなければ数千人の人が喜ぶメリットを獲ることはできない。


誤解されないように言っておくと、僕は別に謝ればいいとは思っていない。
1人でもお客様を失うことは凄く怖いことだし、満足されない方が1人でもいることは、心から悲しく思う。


でも、数人の苦情を恐れるあまりに数千人を捨てる人は、ビジネスの足し算引き算を忘れて、自分の保身をしているだけにすぎない。
1人のお客様を大事にしているというホスピタリティ的な言葉で、誤魔化しているだけだ。
真のホスピタリティを知っている人なら、数千人の笑顔を裏切ることはしないはずだ。

それは、苦情を受けることが嫌なだけだ。対応するのが嫌いなだけだ。辛い思いをしたくないだけじゃないか。


僕は、企業として100点のサービス体制をとるコストを払えない時、ビジネスを足し算・引き算でシンプルに考えて、その最大公約数をとるしかないと考えています。
多くの人を喜ばせることをしない人がサービス・ホスピタリティを口にしても、クレーム対応したくない人の保身でしかないと思うのですよ。


それにしても、ほぼ全員に満足してもらいたいという某ホテルや某レストラン、某テーマパークの本を読んだりすると、それを実現するためのコストやリソースを想像しては気が遠くなるものですw



#追記
もちろんクレーム対応コスト比も足し算引き算した上で、数千人を選択しています。
この足し算引き算を忘れると大変なことになるから。

#追記2
あれれ・・・どうも理解されていない感じがあるので、更に追記。
結局は、儲かればマイノリティは切り捨てっていうのを肯定しているのじゃなくて、程度問題の「程度」の尺度は、クレームの重さを適切に量るべきってこと。
脊髄反射的に対応すべきじゃないし、人数の多少だけで計るべきでもない、その適切さの計算をちゃんとしましょうってことですわ。