インターネット広告ポエム2023

インターネットには自由にアクセスできるコンテンツやサービスがたくさんあります。

これらの多くは広告で収益を得ているので、広告収益が得られなくなければ当然にぼくらが自由にアクセスできる情報は減っていくことになります。

そういった自由にアクセスできる情報がたくさんあるインターネットを維持するためには広告というのはとても意義深くて、重要な役割があると思うのです。

 

僕個人としてはアドブロック(広告が消えるやつ)はできるだけ使わないようにしていますが、

  • とはいえ、アドブロックを使っている人に「使いたくもなるでしょうね」と言うくらいには現状は酷いとも思っている。
  • コンテンツ・サービス提供してくれる事業者が継続的な運営ができる広告収益を得られる健全な状態をつくるために、広告プラットフォームや広告掲載メディア(媒体)が、掲載内容・表示方法ともに閲覧者のためになる状態を目指して責任もって頑張るべき。
  • 閲覧者にとっても広告主にとっても良い状態にしないと、広告掲載メディア(媒体)やプラットフォーマーにとっても継続的に収益を得られなくなるんだから未来がないやろ。

というような考えを持っています。

もちろん、人によって色々な考えがあるでしょうから、アドブロック使うやつ絶対許さないマンもいれば、全ての広告は消えろ全人類アドブロック使えと考えている過激な人もいるでしょう。

 

まず僕のスタンスを書いただけで、この記事はアドブロックの是非を書きたいわけではありません。導入はこんなところにして、インターネット広告ポエムを吟じていこうと思います。
(※いちインターネットの民として思ったことを書いてるだけで、広告業界人ではありませんので、その程度の戯言として読んでください)

 

状況は本当にひどい① : AIと市場環境によって審査がザルになってる

有名人の写真を勝手に使ったSNS広告に多数出回っています。詐欺へ誘導する広告を「つい見てしまう人」を最大化する手口です。

FacebookやInstagram広告を審査しているMetaに被害連絡をしても対応してもらえないという話もあり、かなり深刻です。

 

こちらは広告経由で「このパソコン/スマホは壊れています」や「情報漏えいしています」など偽のセキュリティ警告等を表示し、金銭を騙し取ろうとする「サポート詐欺」に誘導するパターン。

 

サポート詐欺は、詐欺サイトに誘導さえできれば何でもいいので「気象情報」とか「地震情報」みたいなことだけ書いてあったり、有名サイトの名称だけが表示される広告まであり、本当にひどい状況です。

こんなのもあったみたいですね。 

有名人(を勝手に使う)広告は、投資詐欺や情報商材が多いのですが、サポート詐欺の場合は有名人や有名企業・団体を騙っても、気象情報でも、陰謀論っぽいものでも何でもいいんですよね。詐欺師からすれば興味を引いて沢山クリックされれば成り立つので。

インチキくさい広告はできるだけクリックしないようにしたいところですが、ここまで何でも広告にされると見極め不可能なことも多いですから、クリックしてしまうこともあるでしょう。有効な対策は「よくわからない請求が画面に表示されても金を払わない」ってことくらいしかないと思います。 

でも、このレベルのものって広告プラットフォーマーが審査で落とすべき広告であって、消費者個人が対策しないといけないのはおかしいんですよ。MetaとかGoogleはなにやってんだよマジで。

 

現代の広告審査は、ほとんどが機械学習によるAIで行われています。
人力審査ももちろん残ってはいるんでしょうが、プラットフォーマーはとんでもない数の広告を回しているので、AIでその量に対応しようと頑張っているわけです。

目視で審査できる量じゃないのはわかるけど、それにしてもザルの目が粗すぎるし、丁寧に審査しない粗いザルにしておいてもプラットフォーマーにとってマイナスが少ないからそのままになってるんですよね。
プラットフォーマーは利益を出すために丁寧な審査をせずにAI任せにして、社会の安全性を犠牲にして儲けを上げている、と言っていいと思います。

報告すれば詐欺広告が止まることもあるのですが、詐欺グループはまたすぐ別のアカウントからバナーやクリエイティブに変えて詐欺広告を出稿できるので、現実的にはまったく止まっていないという状況です。

詐欺広告を出稿してるグループ自体をBANするなどの対策がないとダメなんですが、広告単体(たとえば特定のバナーが)停止される程度の対策しかされないのです。なので、詐欺を止めるに至らないんですよね。

プラットフォーマーが経費削減のために Trust&Safety部門をレイオフして、AIでできる程度の雑な審査しかせず、広告で収益を上げる部門ばっかり力を入れているせいだと思うんですね。

デジタル広告やアドテクのおかけでインターネットが発展してきたのはありがたいけど、あまりに儲け主義だとインターネットが破壊されちゃうだろ。

詐欺のための広告が強めにimpされる(沢山表示される)ってことは、本来はマトモな広告が表示されるはずの枠が奪われてるってことじゃないですか。マトモな広告主にとっても表示される枠が減ったり、余計な広告予算がかかって損させられてるってことでもありますよね。

当然、それが表示されるサイトやアプリ(媒体側)にとっても、自サイトに来てくれたユーザーに詐欺の入口を提供してしまう。これはブランド毀損にもなるし、他の広告主もその媒体に載りたくないってなるから悪循環ですよね。

プラットフォーマーが儲け主義に走りすぎると、ユーザー・広告主・メディア(媒体)すべてにとって損しかないんですよ。プラットフォーマー、マジ仕事しろ。

デジタルプラットフォーマー側に詐欺広告を取り締まるインセンティブが弱すぎるから、デジタルプラットフォーマーが広告を厳しく取り締まらざるを得なくなるようなインターネット広告に関する法律を作ってくれないすかね、国が(あんまり期待できないけど)。

 

状況は本当にひどい② : 儲かるなら何を読者に見せても良いメディア・サイトもある

こういう広告とかこんな広告って、ありますよね。

※クリックした先に性的な広告画像が含まれているおそれがあります。平気な人だけクリックしてください※

これらはレコメンドウィジェット枠で出てくるやつで、①の詐欺広告と違って、広告を掲載している媒体メディアがこの手の広告が表示される枠としてわかって提供しているわけです(ひとつひとつの広告までは確認してはいないでしょうが、だいたいどんな広告が出ているかは理解しているはず)。

まあ、スポーツ新聞系とかゴシップ系週刊誌はもともと紙の時代からそういう広告を出していたし、読者層が偏っていたからその文化を引きずっているのでしょう(マイナビニュースはそもそもそういうサイトではないはずだし、一般向け記事にこういう広告出してるからアレなんだけど)。

スポーツ新聞系とかゴシップ系週刊誌のサイトでも一般向けの記事があるし、それがSNS経由でアクセスされることが増えていると思います。昔のようにそのメディアに触れる人が棲み分けされていた時代とは違うんですよね。

詐欺広告は完全に規制されるべきですが、それと違いこういった広告表現すべてが規制されることは良くないとぼくは考えています。これらの広告を使って販売されている商品を必要とする人もいるでしょうし、広告出稿をやめろとは思いません。

それだからこそ、極端な規制を求める声が高まらないよう、広告主も広告掲載メディア(媒体)も表現や表示の仕方をよく考えてくれとは思います。
つまり、媒体やリコメンドウィジェット広告を提供している会社が、どの記事にだったら刺激的な広告を載せても良いか、どういう表現までは許されるかとかもっと丁寧にやらないといけないと思うんです。

 

また、広告の内容だけではなくここ1-2年で各Webサイトの広告領域や広告枠もぐっと増えましたよね。

こういうの好きな人いないと思いますけど、ともかく広告面を増やすために記事からブラウザでサイト外に戻ろうとしても記事一覧を出したり、(戻るを含めた)ページ遷移ごとに全面広告を出したり。

さっき書いた通り媒体メディアは自サイトに掲載される広告表現や広告枠をどうにかして欲しいけれど、こうでもしないと運営できなくなってるってのもあると思うんです。

プラットフォーマーからメディアへの収益配分が少なすぎるんだと思うんですよ。吸い上げすぎな上に、もっと儲かるように自動で広告枠を生やしてくる仕組みを提供するのも酷いと思います。

 

状況は本当にひどい③ : ターゲティングの衰退により、幅広く表示させることが得する商材・広告が生き残るようになっている

20年前のインターネットでは刺激的にせざるを得ないような広告やそれらの商材についても、商品を必要とするひと、この広告が刺さる人にパーソナライズされる未来を夢見ていたわけです。

でも現実には「見たくない・自分には合わない広告が出ないようにターゲティングされる」世界はこないまま、ターゲティング規制がかかり「あまりターゲティングしなくても、幅広く多くの人に表示させたら売れる商材・クリックされる広告が生き残って幅を効かせるようになった」ように見えます。
美容系やサプリなどの利幅が大きく購入可能性のある層が広いもの、過激な表現を多数に見せることで得する商材。そして詐欺スレスレあるいは詐欺そのものの商材。

ターゲティングは規制されない方が良かったと言いたいのではないです。プライバシー保護は大切だもの。でも、結果的に幸福になったのかというと状況は面倒かつ複雑になっただけのように見えますよね。インターネットユーザーは幸せになっていないように見える。

これもやっぱりプライバシー保護と健全な広告表示の両立を考えず、ターゲティング広告が儲かるからと規制されるところまで焼き畑みたいなことを続けたからこうなったんじゃないですかね。

(参考)ターゲティングに関する考察として hyroki1980 さんの記事も面白いので、詳しく仕組みなどを知りたい方にはおすすめです。

sizu.me

 

プライバシー観点ではない、健康的で前向きコントロールが必要なんじゃないの。

まったく国や行政も動いていないってわけではなくて、ステマ規制が始まったりしていますね。これは業界団体も関わって議論されたもので、良い形で施行させたのかなと思っています。

これだって有識者からしたら2007年とか08年あたりにペイパーポスト問題として問題提起してた話だと思うんで、やっと法規制か……という感じだとは思うのですが、業界による自浄作用が働かないなら法規制されるしかないという形のひとつでもあると思います。

www.caa.go.jp

 

様々な課題はありますが、単純な規制よりも、テクノロジーで解決可能な規制の導入が望ましいと思います。

色々と実現ハードル高いのもわかるけど、あらゆる広告(ネットワーク経由の広告もそうでないものも)で、ユーザーが「いま表示されている広告をブロック」「他の商品・他の広告も含めてこの広告主をブロック」「この広告ネットワークまるごとブロック」できるようにできないものかなと思ったりします。

いまの現状では、メタクソに不快&自分に表示されるべきではない広告もブロックできなくて、できたとしても「トラッキング(パーソナライズ)を止める機能」しか提供されていないことが多い。
これ、トラッキングが止まるだけで広告の表示は止まらないんですよ。今のままではユーザーがイヤでも広告を出せるようになっている。

ちゃんとユーザーが広告を細かくコントロールできるようになれば、広告主だって無茶で過激な表現を止められるじゃないですか(ブロックされないようにするインセンティブが働くから)。

また、GoogleとかYahoo!広告なんかは過激表現やアダルトに対して厳しめの基準があるんですけど、ネットワーク広告の場合は広告出稿の基準がユルいところから広告を差し込まれてきたりするのです。
ユーザーが詐欺や過激表現を通すネットワークからの広告をブロックできれば、プラットフォーマーも(止められたくないって理由ができるので)もう少し真面目に審査するんじゃないかなあなんて思います。

せっかくデジタルなんだから、固定されてる純広告バナーやインフィード、レコメンドウィジェットも含めてそういうユーザーコントロールを強制すれば、解決できそうなもんですけどね(ルール作るのは大変だろうけど健康的な市場づくりにはこれくらいしても良いんじゃないの?)。

ユーザー個々の動きが全体を良くするような。人類の理性を信用しすぎかもしれないけど、そういうインターネットであって欲しいのよ。

 

「進撃の巨人」136話で、リヴァイ兵長がこういうセリフを言うんだよね。

なあ…
お前たちが捧げた心臓(いのち)は
他の命を踏み潰すためにあったのか?

違う……
俺たちが夢見た巨人のいない世界は
あきれるほどおめでたい
理想の世界だったはずだ

進撃の巨人136話より引用(本当は画像を貼りたいところ)

俺たちが夢見たいんたーねっつも
あきれるほどおめでたい理想の世界だったはず

なんだよね

アドテクが「刺激的な広告を沢山の人に見せる」なんて物量作戦に負けるなんて結末、そんないんたーねっつでいいのかよって思うんだけどなあ。

 

以上、今日のポエムでしたにゃん。