コロナ禍で Uber Eats 利用者が増えて、ラストワンマイル配送が再燃してきている(気がする)

 

 みなさん、Uber で Eats してますか?

少し前までは「隠れた名店のメニューを自宅で食べられる」とか「宅配ピザではない、石窯のピッツェリアのピザが自宅で」みたいなサービスだったのが、いつの間にかマクドナルドとか吉野家を運ぶサービスに変わったような気がしますが、たぶん気のせいではないな。

 

で。この記事を読んだんですよ


松田公太さんのインタビュー記事なんですけど、その中で Uber Eats が飲食店からとる手数料は注文総額の35%もあって、飲食店はそんなにとられたら利益が残らん的なお話をされています。
(読めばわかりますが、Uberを批判するような言い方ではないです)

 

 

その手数料ですが、Uber Eats は飲食店側に値上げして売ることを推奨してます。
下記はウチのオフィスから注文できる範囲で、これを書いている時点の料金なんですが、

 

はなまるうどん「牛肉温玉ぶっかけ」(小)
店頭: 528円  → Uber Eats: 800円
(上記は商品のみ。Uber Eatsは注文者が払うサービス利用料 + 配送料 が別途必要)

 

蒙古タンメン中本「北極」
店頭: 850円  → Uber Eats: 1300円
(上記は商品のみ。Uber Eatsは注文者が払うサービス利用料 + 配送料 が別途必要)

 

すげー値上げしとる。


あ。誤解されると嫌なので書きますが、これ見て「不当な価格」とか言う人は脳内がキッズ過ぎるので落ち着いてください。別に料金が上乗せされていても良いんですよ。
包装代だってかかるし、店頭での通常注文に割り込みで入るのをさばくのも大変だし。


これに更に手数料と配送料も払うの高いし、手数料を何重にも払ってるみたいで気持ち悪いにゃーとは思うけど。

 

はなまるうどんに行くと500円くらいだけど、ご自宅に3人分届けてもらうと3,000円くらい。
……クソ高いけど、それを払う人が世の中にはいるんだから良いサービスではないですか。高いには高いけど、別に不当ではないでしょ。(それにしても高けぇな…)

 

 

さて。
Uber Eats という注文プラットフォームを利用すると、
注文者は商品代+サービス利用料+配送手数料を払います

Uberから配達員に支払われる配送ごとの報酬は、注文者画面で見えている配送手数料の金額ではなく、配達距離などに応じてその2~3倍くらいが配達員に払われています

上述の通り、レストラン側は35%の手数料をUberへ支払うので、そのぶんレストランはUberでの販売については価格を上げていることが多いわけです
(多いというか、ほぼ上乗せしている)

 

 

30~40%も値段を上げても売れるプラットフォームって凄くないですか……これがサービスとして機能していることが異常なんですよ。

 

商品を30~40%も値上げしても売れるプラットフォームなんですよ。(にどめ)

先の記事の中で、松田公太さんはこう言っています。

 

私も安価なデリバリーを可能にしようと1年前から参入準備をしていた。ITなどを用いて次の成長ステージを作ろうと設立した「クージュー」という会社で、デリバリーも検討していた。ただ、ウーバーイーツの独り勝ちでブルーオーシャン(競合の少ない有望市場)だったデリバリー市場は、参入企業が増えてきている。そこで私自身は参入を見送っている。

 

競合が多いから止めたみたいな言い方してるけど、僕としては適切な配送設計ができなくて止めたんじゃないかなと思っています。

 

僕のまわりでもコロナ禍の影響を受けて「非対面の配送分野やりたい」とか「ネットスーパーのシステムに参入したい」という話が多くて、相談されたりすることが割とあります。

専門ではないけど、僕もECのロジから配送のラストワンマイル(地域配送・ローカル配送)の設計までやってたことが少しはあるので、たぶんそこらへんの人よりはチョットは知ってる感じなのです。

 

まず、注文に対してオンデマンドで配送する (まとめて配送するのではなく、注文があったら配送がスタートする)場合、常に配送できる人員をキープしておく必要があります。

いくら副業のギグワーカーとはいえ、数百円もらえる可能性がある・もらえない可能性も高いみたいな状態で「注文待ち」をしてくれるわけではありません。

つまり、配達員が時給1,500~3,000円分くらいは稼げるような注文が入り続けない限りは、配達員がそのエリアで注文待ちをしてくれないということになります。
(または注文が入らなくても、プラットフォーム側が普通に金を払って待機してもらう必要が出てきます)

 

レストランにしても、お薬でもスーパーの配送にしても、まずこの配送網を用意することができなくて挫折することが多いです。

(注文毎ではなく、1日1回などまとめて配送する場合も、そのエリアの配達量が多かろうと少なかろうと人員を事前に確保しておく必要があるので、それでも成り立つくらいの注文量が必要になることは同じです)

 

 これは、どんなに配達効率を上げるようなテクノロジーを生み出したとしてもニンゲンが配達を戸口別に行う以上は変えることができないポイントです。
(なのに、AI・機械学習を使って効率化したら配送料がどうにかなるんじゃないかという相談がまあまあ多い)

 

その配送エリアで別の業務をしている人に、「ついでに」配送してもらうという方法もあります。何かの訪問販売員と協業してるスタートアップもありますね。 

これも、やはり別の業務中に差し込みで注文が入ったのをすぐに運べる人員がいるのか(いないときは注文を受けないのか)、また1件数百円の差し込み程度でその仕事を請けるのか、という課題が浮かび上がるわけです。

 

 

また、配送メッシュの問題というのも大きいところです。

たとえば東京都内すべて合算したら1日に100件の注文がある場合、「渋谷駅付近の注文は1時間あたり1~5件」で「品川区五反田エリアの注文は1時間あたり0~1件」みたいなことが起きます。

 

1箇所から100件の配送が始まるのか、100件それぞれピックアップに行くのかによっても違うのですが (1箇所に集める場合はそのコストもかかります) 、個別にピックアップするのであればエリアごとに配達員が必要になるため、少数の配達員で広範囲をフォローすることはできません。

こういった配送メッシュの計算はAmazonがまあまあ進んでいます。
配送がスタートする倉庫に軽トラ配送事業者を集めて、1台あたりの「荷量が多く、移動が少ない」ように小さいエリアに沢山の荷物を入れるようにしています。

これが「配送メッシュが小さい」ってことです。
ヤマト運輸とか佐川急便はこれを太古の昔から取り組んできているので、別に新しい概念ではないのですが、ここを考えないで特攻していくスタートアップはとても多いです。コロナ禍でまた増えてしまった。

(Amazonが、まあまあ進んでいて…と書いたのは、たいしてテクノロジーを使っているわけではなく現場パワーでそれをブン回しているからです。1時間あたりに配達できる量が多いので、配達員の人件費も支払えてるけど激安だし。)

 

配達する人1人が小さい配送メッシュを受け持てるようにする、というのはAmazonもUber Eats も同じ考え方をもっています。

これは凄いことで、つまり「小さいエリアに分割しても荷量が確保できるくらい注文がある」ってことなんです。
何度も言うけどこれはテクノロジーがどうこうという話ではどうにもできない。


Uber Eats は、配達員が足りなくなると注文できなくなったりするシステムではあるけれど、「配達員が確保できてないエリアは注文が入らない → 配達員が集まらない」になるので、ともかく注文を集めます。

集めますって言ったら集まるものではないので、その荷量確保の徹底ぶりといったら物凄い投資をしています。


配達員だけ確保できてても注文がないと配達員はそのエリアで待機してくれなくなるわけですから、ともかく徹底して注文・荷量を増やすことが重要になるのです。効率化はそれからだ。
(なので、Uberは先行投資で待機中も時給が発生する配達員を抑えていたりしますね)

 

冒頭では Uber Eats のレストランが値段を乗せて売ってるという話をしましたが、こうやって配送のための原資を確保して、「配達可能だから注文が入る」「注文が入るから注文される」の好循環を生み出しているわけですね。
ここまで値上げしても何故か各エリアごとの1時間の荷量が確保できる注文されるというミもフタもない圧倒的なパワーでサービス運営されているのですね。

荷量(メッシュあたりの配送量)さえ先に確保すれば効率化はできると思うんで、こういうアメリカンなやり方は本当に強いわ…

Amazonはロジ(倉庫)のピッキングでニンゲンを激安の奴隷のように扱って、データを集めてから効率化して機械や働く人の環境を良くしている。配送においても同じ。



小さなスタートアップが別業種で似たようなことをやろうとしても仕組みを作りきれないわけですよね。
※そういう取り組みは好きなので、ガチでやってるところがあればお話を聞いてみたいところです。

 

気が向いたら、次回はこの仕組に乗ったゴーストレストラン ( 店舗ではないデリバリー専門レストラン ) のその後あたりの話を書きたいな。
書くかどうかわからないけど、気が向いたら。