心理的安全性がありそうに見えるだけの作られ方

今日もSlackでBizDevチームの成果がド派手に報告された。

祝いのスタンプやマッチョな腕のスタンプ、クラッカーのスタンプがド派手に並び、イカれたオウムのスタンプが景気よく震え「凄い!!!!」「◯◯さんのおかげです!!」「ヤッター」という仲間からの称賛リブライが並ぶ。

毎週のようにSlackに勢いのある報告が積み上げられていく。

しかし、今期1Qのキックオフで経営陣が示したようなことは起きていないような気がしてならないし、なんならその話はなかったことになっていて誰もその話題に触れようとしない。そして先月も先々月も強い経歴のメンバーが辞めた。

心のどこかで優秀な人から抜けているのではないかと考えてしまう。しかし、チームを牽引するマネージャーが1on1のときに「彼は言うことは良かったんですけどウチに合わなかった」とか、ぽろっと「思ったよりできない人でしたね」と言ったりした。確かにそうかもしれない。うちのチームはポジティブで心理的安全性があるチームだ……そう考えなおしてプロダクトチームのカイゼン報告に[神]スタンプを押した。

 

はい、ここまですべて作り話。僕が勝手に考えた妄想の会社の話です。
もしも、あなたがリアリティを感じた のならもっと良い職場を紹介しますからDMください としてもマジで御社の話ではありませんから安心してくてください。

 

チームマネジメントの話っぽいことをツイートしたらブログに書いてくれと言われたので書きます。がんばって書くぞ。

 

モメンタムは成功の源泉である

「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」という有名な凄い人の言葉があります。超単純化して言いかえるとモメンタムは「事業やチームに弾みがついているか、勢いがあるか」という意味です。

失敗続きのチームや上手くいっていない雰囲気のチームで「次は上手くいく」と思うのは難しいですし、ニンゲンは小さい成功が目の前で起きているときに「やれるぜ、俺たちはやれる」と強い気持ちになれるので、それで難しい次の挑戦に向かっていく勇気を得ることが普通です。

事業において小さな勝利を繰り返し、チームに勢い(モメンタム)を作り出すことは、良い事業を作るための全ての源泉となる、だから「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」という言葉に重みがある。わかる。だいじ。

 

なんか勢いあるな伸びてそうだなというチームには人が集まり、商談や提携、メディア露出の機会がどんどん転がり込みます。
逆にモメンタムが失われているとチームから人が離れたり、行動が消極的になったり、外部からも良い話が来なくなったりします。

どんなに価値のありそうな事業をやっていてもチームのモメンタムを維持できないと事業そのものが失速するということは十分にありえる話です。

でも、冒頭の例ようなチームでは勢いつけてるはずなのに死臭がしますよね。モメンタムがあることで起きるべきことと逆のことが起きているように感じます。
勢いのある報告が積み上がっていくと同時に不安も積み上がっている。
(僕の妄想ではありますが)

 

勝利をするだけではモメンタムの定義とズレている。

先日、こんなツイートをしたんですよ。

 

チームに強い勇気と勢いを生み出す、本当のモメンタムに必要なのは「小さくても良いので、事業の成長につながる意味のある勝利を勝ち取る」ことです。

「みんなに伝えてスゲーッスネ!!ヤッターってなる勝利」を増やすだけとは違うはずで、それは"モメンタムもどき"でしかないはずです。

 

 

自家中毒が危険すぎる

自社のプロダクトを使っている顧客に、たまたま偶然や条件が重なって素晴らしい結果が出たとします。でも、その偶然や条件では他の顧客ではほぼ再現しない。

その事例を使って「ウチの製品はこんな凄い結果が出ることもあります」という営業をすることもあるでしょう。(使うだけで誰でもこの結果が得られるんですという嘘をついたり、誤解されるような伝え方でなければですが)成功事例のひとつとして伝えるのは分からなくはない。

 

最初は社外向けに作られた「勢いづけ」がいつの間にか社内のチームメンバー向けにも「我々のプロダクトを使えば、ユーザーはこのような結果を得られるんだ。実際にその結果が出ているのだからファクトだ。」という言葉が飛び交う。成功事例の自家中毒です。

これは嘘のモメンタムを生み出してしまうことになります。「こんな凄い結果が出せる」という勝利を喜ぶあまりに「だから多くの会社でこれが起きるはずだ。もっと売れるはずだ」となったり。ニンゲンは自分たちの見たいものを見るクセがあります。割と気をつけていないとすぐにこんな状態になります。

 

本当に心理的安全性があるチームなら「これは素晴らしい結果だけど、エッジケースの成功でしかないよね。このままだと多くの会社でこれが再現することはないから、そうなるように頑張ろう」となるのでしょうが、自家中毒に陥っているとポジティブさを消す恐怖が先に立つ。内向き(仲間とのコミュニケーション)に疑念や恐怖があるチームには心理的安全性がない。ないのに「俺たちはポジティブな勢いのあるチーム」と言ってしまう。これで自家中毒はより進むのです。

 

「意味のある勝利」が大事なのは誰でも分かることですが、それを得るのは簡単ではありません。「小さくても良い」ですが「質が悪くて良い」のではない…。だから「小さく積み上げて、勝利を共有してモメンタムを得る」のが大事なんですよね。

 

また、社内の偉い人向けに「成功を過大に、上手くいっていないことを過小に報告する」みたいなことをしてる人っていますよね。
最初は社外向けだった「勢いづけ」が自分たちを自家中毒にする他にも、こういった社内の報告が積み上がることでも自家中毒が発生します。心理的安全性がありそうに見えるだけのチームはこうやって作られていきます。

 

文章で書くとバカっぽいのですが(笑)、色々な会社や職場が大真面目でこういうのやっているのを見かけるのではないでしょうか。

 

課題と向き合うことで間違ったフォーカスや自家中毒を避ける

チーム内で誰かが「これって何の意味あるんですかね」と言いながら作業をする。

世の中では割とよく見かける光景かもしれません。

事業・仕事には「やったら良さそう」が沢山あるので、誤ったフォーカスをしてしまうことでブルシットジョブが積み上がっていくのは珍しいことではありません。

 

 

本当に事業を伸ばすためにフォーカスすればそんなことは起きない……と言うのは簡単ですが現実には解決すべき課題にフォーカスできていないことも多いですよね。
だからこそ、勇気を持って踏ん張る必要があるのですよね。

ただ、解決すべき課題は何かを考えたとき、多くの場合その課題の解決は「上手くいかなそう」に見えます。

そりゃそうですよね。
お手軽に事業を伸ばせる、簡単に解決できる課題なんて少ないですから誰だって「やれば上手くいきそうなこと」をしたい。

本当は「これを解決しないと先に進めない」という状況で、上手く解決できなそう/難しそうだからとそれを解決しないままにして「やれば上手くいきそうなこと」を選んでしまう。それが偽のモメンタムやモメンタムモドキを作り出してしまうのでしょう。

 

「これを解決しないと先に進めない」のなら、それを後回しにするのではなく「小さくでも良いから解決すべき課題に少しずつ勝利してモメンタムを得る」しかないですよね。

上手い解決でなくても、小さい勝利でも良い。
そこから初めて目指すべきところに到達するための勝機が見いだせるというものでしょう。

 

 

「俺たちは勝つんだ、強いんだ」と思い込むだけでは"蛮勇"でしかなく、上手くいかなそう・難しそうであっても「これを解決しないと目的地には着かない、解くべき課題に向き合い続ける」ための"勇気"が必要なんじゃないかなと思います。

課題に向き合うのには、上手くいかなそうなことを乗り越える必要があり、上手くいきそうなことを積み上げる指向の人からは時にそれはネガティブに見えています。

難しいことに向き合っている勇気ある人と、そこではなく上手くいきそうに感じるライトなことばかり試す人、どっちが「ネガティブ」なんでしょうね?

 

 

意味のない勝利モドキを積み上げれば遠回りをして結果的にチームはモメンタムを失うし、意味のある勝利を得たとしてもそれを勢いに変えられなければチームは強さを得られない。

祝いのスタンプやマッチョな腕のスタンプ、クラッカーのスタンプがド派手に並ぶSlack、小さい勝利でもみんなで称え合う。

そういうチームの雰囲気に対して醒めた態度をとったり「そういう雰囲気が好きになれないわー」みたいなことを言ったりするのもまたモメンタムの醸成を妨げることになります。

こんな風にブログに書くだけなら簡単ではありますが、やっぱりチーム内に勢いつけるだけでも簡単なことではありません。

小さい成功が目の前で連続していくことで「やれるぜ、俺たちはやれる」と強い気持ちを生み、チームを強くします。「こんな小さな勝利たいしたことない」とかいう人たちの集まりではチームは強くなれないのですよね。

 

変な例えですけど、インチキ臭いビジネスしてる会社でも伸びているチームだと人が増えるし、みんなインチキでも頑張ってシゴトしたりしちゃうんですよ。それくらいチームのモメンタムというのは成長の源泉になります。

 

意味のない勝利モドキを積み上げれば遠回りをして結果的にチームはモメンタムを失うし、意味のある勝利を得たとしてもそれを勢いに変えられなければチームは強さを得られない。

 

まとめ

  • これを解決しないと目的地には着かないという課題にフォーカスする。
    上手くいかなそう・難しそうであっても。
    ※上手くいきそうなことにフォーカスするのではない
  • 大きな課題は簡単に解決できないのだから、小さく課題解決に向けて動く
    ※課題解決は「色々やってみる」ではない
  • 「小さくても良い」ので意味のある勝利を大切にする
    ※勝利できなくても次の勝利に向けての学習を積んで無駄にしない
    ※フォーカスした課題からズレた勝利を積もうとしない
  • 小さい勝利を勢い・モメンタムに変える

 

こんなの簡単ではないですよね。僕もできているかと言われるとできていないことも多いです。がんばって良いチームや良い事業を作っていきたいと思います。

 

 

コロナ禍になってから、新しい人とつながる機会が減ってしまったので積極的に色々な人の相談にのったり、雑談相手になってもらったりしています。

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