事業のパワーだけあれば他も変わっていくものだと考えているとかなり厳しい

自分のかかわる事業のグロース、事業成長って嬉しいですよね。
事業を成長させるだけでも難しいものですが、今日は「大きくなっていく事業に合わせたオペレーションや組織も必要になるよね」という当たり前の話を書きます。

 

いきなり話がブッ飛びますが、

ぼくはバイクが大好きです。
自転車じゃなくモーターサイクルの方。

最近は買うのを自重しているけれど、バカみたいにパワーのあるエンジン積んだバイクが好きでして、出そうと思えば300km/h以上出るようなスーパースポーツを何台か乗り継いだり、サーキットを走るのにレース用のバイクを買ったりしていた時期もあります。

バイクだけじゃなく四輪の車も同じなのですけど、エンジンのパワーについてこないようなフレームや足回りが弱々の車体だと、どんなにパワーのあるエンジンを積んでいても真っ直ぐすら走らないし、速く走らせることはできません。

貧弱な車体にモンスターパワーのエンジンを載せた伝説のマシンを押さえつけながら最高の走りをする……みたいな漫画みたいなことは起きません。

乗りづらくて速くない乗り物ができるだけ。速くない上に転びやすいし。エンジンとか車体のバランスをとる技術が低かった40年くらい前なら別ですけど現代の技術では絶対レベルでそんなことは起きないのです。。

エンジンパワーがあれば直線だけは速い、みたいなことをイメージするかもしれませんが、車体がエンジンのパワーを受け止められないと真っ直ぐだけでも速く走れないのですね。

そして、当たり前ですが車体が弱々だとコーナリングスピード(曲がる速度)は出ません。つまり、直線もコーナーでも遅い。

速く走るためにはパワーのあるエンジンはもちろん必要なのですけど、そのエンジンを活かして走れる車体も同時にそろっていないといけないのですね。
(もちろん車体だけしっかりしていても、エンジンパワーがなかったらその車体を活かすことはできませんから、結局は両方いるよねという話なのです)

とてもつまらない結論ですが、バランスの悪いパワーだけのモンスターバイクを押さえつけながら走るなんていうのは漫画だけの世界なのです……。

 

仕事も似たようなことがよくあります。

売上やユーザー数などの重要な指標をガンガンに伸ばせるモンスターエンジンを積んだビジネスは、そのパワーを受け取めとめられるオペレーションや業務設計がないことである時期から事業が伸びなくなったり、チームが崩壊するのを見かけることがあります。むしろよく見かけるあるあるシチュエーションですらあるかもしれません。

もちろんパワーが出ていない事業でオペレーションばかり固めても無意味どころかマイナスなのは言うまでもないのですが、事業の場合は「売上や規模などのパワーが大きくなったら、そのパワーを受け止められる業務プロセスにするぞ」と後付でやろうとしても難しいというのがあります。

後からやろうにも途中で規模とオペレーションや組織が合っていないことが要因で成長が止まりがちですし、何とか頑張って成長を止めずに規模だけは大きくなったとしても社員などのステークホルダーが多くなっている中で業務プロセスを変えなくてはいけなくなると、適切な内容にしていく難易度がムリゲーレベルに高くなります。

 

事業だと、エンジン出力を上げる(売上や利益を上げる)だけでもめちゃくちゃ大変です。それができてるなら立派です。だから必死で何とか伸ばした結果としてオペレーションが規模と合っていなかったとしてもそれを責めたり揶揄したりするのは酷だとは思います。

しかし、本当に強い組織やってるなあって企業はやっぱり事業にパワーがあって、それを受け止められる仕組みやオペレーションが整ってるなあとも思うのです。

事業のエンジン出力を上げながら、それを活かせる組織やオペレーションに変化し続けることができる(パワーの方を上げられてるだけで十分に立派なのに、それを更に超えるための動きまでできている)チームって何が違うんでしょう。

ぼくも違いを理解しているわけではないのですが、色々な事業に関わる中で見てきた感じとしては、規模の経済 *1 が効いてコストが下がったり効率が良くなるはずだと考えていると、手遅れになるというのがある気がします。

「いまの10倍の規模になっても耐えうる組織やオペレーションを作らないといけない」という観点で備えている場合は上手くいきやすく、逆に「10倍の規模になるころには、それに耐えうる組織やオペレーションになっているのだろうな」と規模だけ大きくすれば、経営者が事業のパワーだけあれば他も変わっていくものだと考えているとかなり厳しいのかなと。

 

もちろん、中にはオペレーションや組織作りをあまりやらずに事業の圧倒的パワーだけで伸びたという事例もあるにはあるでしょうけど、確率だけでいえば成り行きで生存できる可能性は低いんではないでしょうか(あと、やはり伸びたあとが厳しそう)。

 

事業のエンジン出力を上げながら、それを受け止められるように組織やオペレーション改善もする、そんな事業や会社をつくれるように頑張りたいものですね。がんばるぞ。

*1:規模の経済 : 同じ生産設備でも生産量・規模が高まれば、製品1点あたり生産コストが安くなることから大規模化で収益性や競争力が高まること