他者の眼になる魔法のようなインターネット体験。”Be My Eyes “

目の見えない人が、床に物を落として困っている。

見えにくい視力の方が、説明書の小さい文字が読めずに困っている。

そんなときも目の見える人―――例えばぼくが―――代わりに見て説明すればいい。遠く離れた場所にいる知らない人でも大丈夫。

今日は、そんな超絶すごい体験を作り出してるアプリの話です。

 

“Be My Eyes”というインターネット体験。

仕事中、机の上に置いてあるスマホが震える。“Be My Eyes”というアプリの呼び出し通知。ちょっと通話する余裕くらいはあるなと思ったら通話に出ればいいし、時間がないときなら他に時間のある人が出てくれるから自分が出なくもいい。

通話に出たら、スマホのカメラを通して目の見えない人から頼まれたものを見て説明する。

「説明書を読んでもらえませんか?電気の消し方を知りたくて。」
「ボタンを長押しすれば電気が消えるって書いてありますよー」

「床に落としたものを探したくて…」
「ちょっとスマホ引いてもらっていいですか。金属の小物みたいなやつですかね?それなら左足のちょっと先くらいにありますよ」

通話はほんの1分から3分くらい。その数分が世界中で「困りごと」を「スマホで解決できること」にしているんだから凄い(解決できないこともあるんだろうけれど)。

※特定できるといけないので、記事中の内容は実際と少し変えたり、このアプリを使っている別の方から聞いた話を混ぜるなどしております

 

Be My Eyesは、目の見えない/見えづらい人の代わりに、カメラを通して見える人が目の代わりになる。そういうアプリです。

使っていると、遠くにいる誰かの目になるという体験が凄すぎて「なんだこれ魔法か……?」と思ってしまいます。不真面目なことを言うと結果的に誰かの助けになっているのかもしれないけれど、ボランティア的な人助けというよりも、それを超えた体験をしてるぞ……という気持ちが高まるのです。

いや、本当に「代わりに見ている」というよりも、体感的にも誰かの目になってるって感じるんですよ。
ぼくが誰かの目でありアプリ・システムの一部になっている感覚、なにこれ超インターネット体験じゃん…… 魂が中学二年生なのでこの体験を生み出すテクノロジーの使われ方に興奮してしまうのです。

ともかく使ってみて、誰かの「眼になる」体験をしてみてほしい……。

www.bemyeyes.com

 

「お花はどこにありますか?」

依頼のほとんどは「青と赤のお皿を買ったんだけど、いま手に持ってるのは青ですか?」とか「カップラーメンの待ち時間が3分か5分か説明を読んで」みたいな感じですが、ある日 Be My Eyesの通話に出たときにちょっとした素敵体験がありました。

「お花が咲いているはずなんですけど、どこにありますかね?」という相談。お花?方向も分からないということはほぼ見えていないのだと思うけれど、咲いた花をどうするんだろう……?

そう思っているとき、Be My Eyesのカメラを向けてくれた先に、美しい花が咲いていました。

「きれいに咲いてますよ……!」

「写真を撮って人に送ろうと思って」

人の目になることでこんな体験を一緒にできるのもBe My Eyesの素敵なところだと思います。

 

通話に出たい人は沢山いる

世界中にかなりの数の目を貸せる人がいるので、通話に出られなくても大丈夫。ほぼ別の誰かが出てくれるし、なんなら競争になるくらい通話に出たい人は沢山いるw

これ、Be My Eyesユーザーあるあるでして、Twitterでも「また出られなかったー」という投稿をよく見かけます(笑)

ユーザー比率として目を貸す側が圧倒的に多いらしく、アプリの呼び出し音が鳴っても自分が一番早く出られることは少ないくらい。また、他の人が優先されているのだと思うのですが何週間も鳴らないこともあります。
※以前は深夜も鳴ったらしいけど、いまは午前8時から午後9時までしか鳴りません

手が離せない時に呼び出しが鳴っても出なくてOKなのが良いんですよね。取り合いになるくらいユーザーがいるから他の人が通話に出ますので安心安心。

それも、インストールしている人が沢山いて、鳴ったときに出られる人をそれなりに確保できているから。なかなか出られないのが良いことなんです。

もっともっとユーザーが増えて「どんなときでも必ず誰かが出る」がより強固になったらいいなーなんて思います。

 

タブレットのここ、何が表示されていますか。

ある日、たまたまた出た通話で。

これ、とある大手運営の情報アプリのことなんですが、このとき通話した方によると「この情報アプリは他と比べてかなりアクセシビリティに配慮されていて目が見えない自分にとって凄く使いやすいのだけど、最近リニューアルされてからは一部が音声読み上げに非対応になってしまった。それで、音声読み上げできない部分をBe My Eyesで見てもらったんですよ」と。

その情報アプリは結構大きな企業の有名アプリです。アクセシビリティに配慮されてて他より使いやすいなんて言われるのは流石ですよね。でも、そこまでやってるのにリニューアルで見落としがあったということでしょう。これは運営会社も気づいてないと思います。

「じゃあ、ぼくが代わりに不具合の報告フォームからメールしときますよ」とお伝えして通話を切りました。ぼくは目になれるだけじゃなくて不具合報告までしちゃう男なんだぜ。

メールを送ってから、しかし大手に不具合報告しても対応してくれるか分からんよな……などとナメてかかっていたのですが、速攻で不具合報告の感謝といつまでに修正する予定だというメールが返ってきたんですよ。某大手サービス運営会社さんナメたこと思ってホントすみませんでした。むしろ大手の対応力すごかったです。ちゃんとアクセシビリティに取り組んでてマジリスペクトっす。

Be My Eyesはランダムに繋がって、通話を切ったあとは同じ人に繋がることはありませんし、お互いの情報は何も表示されることはないので連絡する手段はありません。

そのため「対応してくれるそうですよ」ってお伝えすることはできなかったのですが、修正されたアプリを使って「おっ、あのときの人が運営会社に伝えてくれたんだな」と気づいてくれたかもしれませんね。思い出してくれてなくても、不便が解消されくれていればそれでいいんですけど。

 

“Be My Eyes”で目を貸したい側向けTips

この記事を読んで何だよそんな体験したいじゃんよ。インストールするぜするぜ、とお考えになった目を貸したいみなさんのために知っておくと良さそうなBe My EyesのTipsを書いておきますね。

  • この記事でも書きましたが、手が空いてないときに出られなくても気にしない。他の人が出るだけなので。
  • そして、通話に出られないからといってアンインストールしないでください。インストールしておけば、いつかどこかで他の人が出られないときにあなたの目が必要になるときが必ずきます。だからその時までアプリを寝かせておいてください。
  • 目が見えない方はスマホのカメラをどこに向けたら良いのか分からないので、カメラを対象物に近づけすぎることが多いです。見えている方も「もうちょっと右に……あっ逆ですうう」みたいになって、リモート二人羽織みたになりがちです。そういうときは落ち着いて「いったん、スマホを引いて広い範囲が映るようにしてもらえますかー」と言ってみると割とスムーズにお役に立てたりします。
  • Be My Eyesはボランティア側が相手のスマホのカメラで静止画を撮影できます。これは動画だと読めない小さい文字の識別などがしやすくなる重要な機能です。「◯◯を読んで」って言われたときは動画のまま読もうとせず、静止画を撮って読むことをオススメします。
  • Be My Eyesのアプリから相手のスマホのライトを点灯することができます。わざとカメラの画質を落としてるんだと思うんですが、ライトをつけないと上手く見られないことが多いのでライトをつけられると覚えておいてほしいです(慣れていないうちは、通話が繋がったことに慌ててしまう人も多いみたいなので)

 

インターネットの力で誰かの目になる凄い体験、おすすめです。

www.bemyeyes.com