失敗を考えないリーダーは「失敗を恐れてない」のではなく「致命傷になりえる課題を見ることすら怖い」んだと思う。

このブログを読んでいる方はご存知だと思うのですが、僕は意思決定のプロセスや態度についてやたらよく書いています。不確実性が高いこと(例えば新規事業など)をやるときは、どういう思考プロセスで意思決定をするかが重要だと考えているからです。

今日は「失敗を恐れない」態度には種類があるという話を書こうと思います。

 

実は「上手くいくことを信じる」のはとてもとても難しい

新しい事業やプロジェクトをやるとき、少なくともリーダーは成功するつもりでそれに取り組むわけです。
(やりたくもないのに押し付けられてやってる等で、失敗をわかっててやる場合もあるかもしれませんが、そういう例は除外します)

僕自身が事業をやってるときもそのつもりですし、スタートアップや色々な会社の事業に関わっている中でもリーダーはみんな成功するぞという気持ちを持っています。

やったことがない人には想像が難しいかもしれませんが、実はこの「上手くいくことを信じる」という気持ちを強く持つのはとてもとても難しいことです。

なぜなら、不確実性が高い事業などは「普通に考えると失敗する要因の塊」なので、普通に考えると失敗する要因がいくらでも思いつくのです。つまり、普通に考えられる人ならば上手くいくことを信じられなくなるのが当たり前なのですよね。

 

しかし、それは普通に考えられる人の話です。

多分、仕事をしていて「普通に考えない」タイプの人に出会ったことがある人も多いのではないでしょうか。

つまり、普通に考えると失敗する要因がいくらでも思いつくのだとしても「俺はそうは思わない」とだけ言って普通に考えない。つまり失敗することを考えない。

失敗前提でやっても仕方ないので、失敗しそうなことは考えない。

世の中では、こういう人が上手くいくと思われているように見えますが、個人的には疑問です。「普通に考えない」ことで成功してるのは、たまたま生き残った生存者バイアスの結果を見ているのであって、失敗している人が沢山いるわけです。

冷静になって考えてみると、失敗しそうなことをやったら失敗という結果になることが多いのは当然です。たまたま失敗しなかった人もいるけど再現性はないのです。

改めて文章に書いてみると、当たり前のこと過ぎて「なぜ、僕はこんな無意味なことを書いているのだ…」という気持ちになったりもするのですが、でも現実の仕事の現場にいくと「失敗しそうだからやらないなんてのは、やらない理由探しでしかない。失敗を恐れるな!」と言って地雷原に部下を特攻させるような上司っていたりするんですよ。

地雷原に突撃したら死ぬんだから、失敗しそうならやるな。

 

「どうしたら失敗するのかを考え、どうやって避けるか」を計画する

じゃあ、普通に考えれば失敗すると考えてしまうような不確実なことに対して、「上手くいく」というポジティブさを健全にを持つにはどうしたら良いのか。

  • どうしたら失敗するのかは普通に考えれば思いつくのだから、それらの課題から本当に致命的な課題は何かをちゃんと見極める。
  • その致命傷はいつまでにどういう状態にならないと発生するのか、致命的な状態になるまでの計画を立てる。
  • いますぐ致命的な課題を解決できないとしても、課題に対してのリソース調達(致命傷になるまでに対応する人員や専門知識などの調達や配分)計画が立てられている。

そうです。「失敗するときのことを考えるな」ではなく逆なんですよね。
「どうしたら失敗するのかを考え、どうやって避けるか」を計画する。

そうすれば「予め見えている致命的な失敗を避け、自分たちは成功する」ということを信じられるじゃないですか。
言葉遊びっぽいけど、失敗する可能性と向き合っている人だけが本当に「失敗を恐れない」ことが可能になるのだと思います。

 

失敗を考えないリーダーは「恐れてない」のではなく「致命傷になりえる課題を見ることすら怖い」んだと思う。

これまでの仕事人生の中で、僕は「どうしたらこの致命的な課題を解決できるか」ということに何度となく取り組んできました。

その経験のなかで本当に致命傷(事業が停止するとか、資金が尽きるとか)に至ったのは「上手く避けられなかったとき」ではありませんでした。
そうです、致命傷に至るのは「失敗を恐れるな。そんな失敗したときのことを考えるのを止めろ」と言って、致命的な課題をいつまでに解決しないといけないのかを考えないリーダーやマネージャーがいたときです。

それは「失敗を恐れていない」のではなく「致命傷になりえる課題を見ることすら怖い」んですよね。

イシューからはじめろ!イシューからはじめろ!って言いながら「イシューからはじめよ」で108回くらい叩きたい。ソフトカバーだからきっと痛くない。

 

 

「失敗を恐れない」や「上手くいくことを信じる」には、上手い下手がある。

だから「失敗を恐れない」とか「上手くいくことを信じる」のが本当に上手い人は、ちゃんと致命的な課題を探し続けているし、それをいつまでに解く必要があるのかを常に見ているのですよね。

僕も常にそれができているかというとまだまだ未熟なのだけれど、ちゃんと課題に向き合うことで「上手くいくことを信じる」のが上手なひとになりたいなと思うのです。