ちゃんと裏取りされたニュースや丁寧につくられたインターネットコンテンツが読める時代の終わりが来るかもしれない。
正直、もう手遅れだとは思うけど、いまからでも「えっこんなことになっていたの」と思って動く人がいれば少しは何かが起きるかもしれないので書く。
■すべてがわかる要約
NHKと総務省「震災やコロナで、ラジオとテレビだけじゃダメとわかった。国民に必要な情報を届けるにはWebやアプリやSNS、様々な経路をもつ公共メディアが必要なんや」
新聞各社「NHKは放送だけやれや!! ネットの特集とか気合入れたコンテンツやめろ!!!!」
総務省「それもそやな。NHKくん、ネット情報はテレビラジオ関連だけにしてもろて」
NHK「……日本に必要な取り組みだけど、逆らえないよ(´・ω・`)」
ぼく「まさか現代でメディアのネット活動を制限するわけない………えっ本当に制限するの!?!?インターネットがゴミ情報だらけになっちゃうよ、誰かタスケテー 」
// 【結局どうなった?】2024年追記
「テレビ時代の公共放送」から「デジタル時代の公共メディア」になって、国民のための丁寧につくられた高品質コンテンツを発信するという夢は潰えるという結果になりました……。
夢は消えましたが、「NHKのネット情報はすべてテレビ・ラジオの書き起こしのみにしろ」という新聞社からの圧力はなんとか退けられ、「番組に関連していればコンテンツを出せる」という形になりました。
「デジタル時代の公共メディア」からはほど遠い状況ですし、この記事に書いたような懸念はあり、日本語インターネットの情報品質は大きく後退しますが、完全にネット撤退とか書き起こしのみになるという自体は避けられたようです。
// 2024年追記ここまで。以下本文。
NHK職員「NHKのネット記事はすべて廃止」→ すべてではないが大幅な削減ほぼ決定
12月2日のデイリー新潮にその記事の本題と関係なく、NHK職員のこんなボヤキが載っていたことが一部で少しだけ話題になりました。
うちはネットの記事配信にこの数年力を入れてきましたが、民業圧迫との批判を受け、近くすべて廃止になる。NHK NEWS WEBというサイトなんて月間で4億PVも取れる日本最大のウェブメディアにまで育ったのにです。せっかくこれからはデジタルだって頑張っていたのに、ふざけんなって気持ちになるでしょう。
デイリー新潮より引用
詳しくなさそうなコメントだから、NHKの職員ではあるけどWeb関連業務に詳しくない人の発言なんでしょうね。まあ週刊誌っぽい記事でいろいろ怪しい。
……が、NHKがネットの記事配信に力を入れてきたことと、そしてNHKのインターネット上の活動が危機に晒されていることは残念ながら正しい情報です。すべて廃止にはならないと思うけど、ネットでの情報発信が激減されることはもうほぼ決まっている規定路線です。
新聞各社を中心に既存メディアが、徹底的にNHKのネットニュースや情報発信を止めようと躍起になっているからです。
新聞協会は徹底的にNHKのネットニュース配信を止めさせる気だ。
— フジイユウジ (@fujii_yuji) 2023年12月5日
これが通ったら新聞は有料記事を増やすし、今までのようなネットで気軽にニュースを読める時代は終わる。
NHK文字ニュース業務、新聞協会がネット配信業務から削除求める…に懸念 : 読売新聞オンライン https://t.co/NpFu47wF49
NHKはテレビ以外の伝送経路でも国民に必要な情報を届けたいが、新聞社に殺されようとしている
あなたがNHKのことを嫌いでもいいので、まずは状況を知って欲しい。
NHKは、かなり早い段階から日本国民がインターネットで情報を得るようになることを見越してアプリやWebなどの拡充をしてきました。
新聞各社も努力はしているけれど、NHKに比べれば稚拙に見えるくらいのレベル差で、NHKが他に先んじて人材と資金を投入してめちゃめちゃ力を入れてきたのは間違いない。
災害情報、ニュース、その他のコンテンツを見てもそれは明らかで、これからの時代にアプリやWebなどのデジタルでの情報発信が重要だと考えていたのは間違いないでしょう。明らかに新聞各社や民放とくらべて力を入れ方も面構えも違う。
「NHKの人たちは、公共放送から公共メディアになろうとしていて、テレビだけではなくデジタルで情報発信する大切さを知っているな」と僕は思っていました。
コンテンツのつくり方・インターネット上でどうやってユーザーがコンテンツに到達するか、各チャネルでどう見せるべきか、よくわかっている人がやってる感じが凄かったんです(過去形)。
東日本大震災のときに緊急事態だからとUstreamでテレビを配信した経験から、伝送路をテレビに拘らず、日本の国民が知るべき情報をテレビ・ラジオ・Webテキスト、動画、SNSなど様々なチャネルを使って配信するようになっていったのだと思います。
ですが、NHKは公共放送ですので、法律で放送以外の業務に制限がかかっています。
放送の補助的な業務でしかネットを扱えないというルールがあるのですが、世の中はとっくにインターネット時代が"始まってる"どころか、ネットで情報をとるのが"普通"の時代ですので、放送しかできないなんて時代遅れもいいとこです。
そこで2022年から総務省「公共放送ワーキンググループ」でインターネット関連業務も放送の補助的な役割ではなく必須業務にしてはどうかという動きになっていったわけです。
これな
— フジイユウジ (@fujii_yuji) 2022年11月24日
"NHKや民放、新聞といった伝統メディアはネットにおける品質確保に貢献することが期待されており、ネットの課題も含めて対応するためにもNHK単体の議論ではなく、デジタルプラットフォーム事業者も含めて、情報空間全体での在り方を考えていくことが求められている"https://t.co/qkWckWzPnE
このツイート(Xポスト)のように、日本語のインターネット上で流通する情報品質をどのように良くしていくかという話だったはずなんですよ、もともとは。
ところが、NHKのネットの使い方が上手いことを面白くないと思っていた新聞各社からは放送業務の縛りを突いて総務省に「民業圧迫だ。放送ではない業務をなし崩し的にやっている」と圧力をかけられ、なぜか逆にNHKはネットでの活動を激しく縮小させられることになってしまっているのです。
NHKのWebやアプリでのニュースが民業圧迫になるかもしれない&放送と配信の分離なども検討して、ネットの文字ニュース縮小を示唆。
— フジイユウジ (@fujii_yuji) 2023年5月30日
NHKニュースの品質が良いから民業圧迫というの、むしろNHK品質くらいを基準にしてないと、マスコミがいまの規模を維持できないと思うんだけどhttps://t.co/ZsHElWEnsC
特に「NHK政治マガジン」というネット独自で作られた特集コンテンツに新聞各社は大激怒しました。
内容がわかりやすく、読み応えがあるつくりこみされたコンテンツで、政治に興味のある広い層に人気がある。新聞社は自分たちがそんな作り込んだデジタルコンテンツができないからこれを止めさせたい。「NHK政治マガジン」や特集ページだけじゃなく作り込まれた独自記事すべてを潰したい。
新聞各社がNHKと同レベルの作り込んだインターネットコンテンツをやれるならいいけど、「俺たちはデジタル下手だから、ネットの上手いNHKをネットから追い出そう。新聞は衰退している弱者なんだ」ってのはないだろうよ、と僕は思います。
(NHK嫌いな人にとってNHKが弱るのは嬉しいかもしれないけど、でもだからといって旧来のマスコミ新聞各社の言い分が正しいとは思えなくない?)
国民が良い情報を得るジャマしてるんだよ、新聞が。
やることがこすい。クソかよ(口が悪い)。
新聞各社がNHKのネット活動を縮小させようとしていることについては小さくしか報道されず(だって報道すべき報道機関が当事者だからね)、あまり大きく取り上げられたりせずにここまで来てしまいました。
NHKの「テレビ放送(動画)をネット配信」が総務省OK出す代わりに、ネットのニュースやテキストコンテンツ(特にNHK政治マガジンや感染症情報の特設ページみたいに手間暇かけて作られている特集コンテンツ)は殺されることになるところまで追い詰められています。
最終までに細かな微調整があるにしても「放送と同一」しかネット記事にできないことはほぼ確定でしょう。NHKが白旗あげてて、新聞は勝利宣言みたいなもんですよね。
総務省「公共放送ワーキンググループ」で議論が終わったことになっていて、国民からのパブリックコメントも集め終わってるるので終わってるんですよ。もう終わりだー
新聞各紙が、NHK政治マガジンなどの品質の高いNHKのネット活動に圧力かけて止めさせようとしてるの、パブコメ募集してるから送ってみよう。
— フジイユウジ (@fujii_yuji) 2023年9月9日
新聞社は品質の高いメディアを作るのが最優先で、NHKに「品質の高い情報発信するな」と文句つける事じゃないと思う。https://t.co/PJW6r6USop
このパブコメ募集してるの話題にならなかったなー。
マジでもっと騒げばよかった。
ほとんどのマスコミでは「NHKがテレビだけじゃなくネット配信(動画)も業務にしようとしている」という内容で報道して、その影でみんなに知られないうちにひっそりとNHK殺しが進んでしまったのです。
もう終わりだー
でも、今からでも何とかならんかなあ。
なにかのきっかけで炎上して国会で揉めて頓挫とかしないかなー
NHKを殺したあと、新聞やマスメディアはペイウォールに閉じるよね。
そう。じゃあ、NHKレベルじゃないにしてもそれ以外のメディア記事を読めば良いじゃんって思うでしょ?
僕にもそう思っていた時期がありましたよ(謎の上から目線)。
ここ2年くらいの間に多くの新聞がペイウォール(有料会員のみが読める記事)を増やしていますよね。もちろん、これは良いことだと思います。お金かけて作った記事をお金をとって読んでもらう。金を払いたくなるくらい高品質ならな。
僕はいま新聞2紙デジタル版の課金してるけど、NHKがネットから追い出されたら、そのあと新聞各社はもっともっと有料記事を増やすようになるのも規定路線といえるでしょう。
前述のようにデジタル最適化の品質を上げていない新聞各社ですから、NHKを追い出したあとは更に品質を上げなくても良くなっていきますよね。品質はあまり上がらず、ただただ有料化が進むのです。それでいいんか?
(この記事でいう"品質"は報道品質ではなく、インターネットでより良い情報流通させて良い体験を大量に生み出すためのプロダクト品質のことですので、NHKや◯◯新聞に品質なんかあるかみたいな党派性・政治的なご意見はお控えなすってください)
良いコンテンツには金が払われるべき、僕もそう思います。
しかし、課金して読まれる品質をめざすのではなく、NHKを追い出せば自分たちの有料記事がもっと読まれるようになると勘違いしている新聞社の見立ては間違っていると僕は思います。
NHKがネットニュース減らしたら◯◯新聞に課金するって人が沢山いると思います?
本当に?
さらに言えば、新聞社はGoogle ニュースショーケースという仕組みを通じてGoogleから資金を得ていますので、NHKのようなインターネット・デジタル活用を徹底的に頑張らなくてもお金が入ってきてしまうという特典がありまして、Googleに飼いならされているところもあるのです(これはまた別の話だが)。
良い面も沢山あるんですが、新聞社が時代に合わせてデジタル化を全力でやらなくてもお金入ってくるので、改善の力が働かないんじゃないですか。読売新聞なんか販売店(配達してる店舗)を通してデジタル版の申込するんでしょ?
デジタルやる気ないじゃんやる気のnasaすごい。
フェイクニュースやデマの拡散がより酷くなることは間違いない
いまでも新聞各社のネットニュースから情報を切り取って、ミスリード(読んだ人が誤解)するような見出しをつけなおしてX/TwitterやSNSで拡散させようとしてくるようなフェイクニュースまがいのビジネスをしている人たちいますよね。
〇〇 Newsという名前のサイトやアカウントで、恣意的に切り取ったニュースやフェイクに近い情報を流す旧まとめサイトの現代版、そのうち処されてなくなるかと思ってたんだけど、むしろ有名人がコメント付きシェアしたりするくらいの広まりを見せていて、ニンゲン社会の難しみを感じている( ˘•ω•˘ )
— フジイユウジ (@fujii_yuji) 2023年6月18日
いまでもよく「大手新聞の記事はバズってないのに、同じ事件にデマまがいの見出しをつけた◯◯ニュースだけバズってトレンド入りしてる」ことが沢山あります。リンク張りたくないから、ここに具体例を書かないですが、ぜひみなさんも比較しに行ってください。驚きますよ。
新聞社がペイウォールで閉じるようになったら、つまり会員向けの有料記事ばかりになったら、多くの人たちが読むニュースは無料で目を引く◯◯News Japan とか◯◯速報の記事ということになります。ペイウォールが広まることでこの傾向はもっともっと酷くなるんじゃないですか。
NHKを追い出しても新聞社は幸せにならず、ただただフェイクまがいの見出しをつけるヤバいサイトが伸びるだけなんじゃないですか。
そうなるのは誰のせいですか。
新聞が苦しいのはNHKのせいではないし、NHKをインターネットから退場させても変わらない。
まず、新聞社のみなさまには目を覚ましていただいて、NHKをネットのテキストコンテンツから追い出すことを頑張るよりも、NHKと同じくらい自分たちの記事をデジタルなど様々な方法で届ける努力をしたら良いんじゃないですかね。
NHKは民間と使える資金が違う、それはそうでしょう。僕もそう思います。
でもNHKのネット活動を縮小させれば、民間の新聞社の事業が伸びだすんですか?
それなら民業圧迫と言えるけど、そうならないなら「この縮小は民業圧迫だから妥当」とは言えないですよ。新聞社がやるべきことは、もっと事業を現代的にして磨くことであって、NHKの足を引っ張ることではないはずです。
(ここ追記)→「いまより受信料をとる範囲を広げる流れにするはずだから退場させて当然」っていう人がいますけど、今回のこれはテキスト記事の話で、Web動画配信は進めてるんですんですよ。テキストの独自記事だけを退場させてもその議論に影響しないし、それは別の論点なんですよ。
NHKも必要だけど、新聞も必要なんだよ。弱体化されたら困る。
こんなつまらん工作してないで、もっともっともっと頑張ってくれー。
それをしないで、日本語インターネットの情報品質を落としてしまうのは、反社会的な行為なんじゃないですか。「良いコンテンツには金が払われるべき」とは僕も思いますが、NHKの足を引っ張ったら金を払うべき良いコンテンツに変わるんか?クソが
言い過ぎかな。でも僕はそう思うよ。
日本語インターネットからマトモな情報が減るのはどう考えてもお前らが悪い!(今からでもどうにかならないですかね……)
この件が2022年から今まで大きく取り上げられることもなく、パブコメもつつがなく募集終了し、総務省の中や関係者の間では議論が終了して、あとは国会待ちっていう状況になっているのは、僕も含めてみんなが「いやいや、さすがにあのNHKのインターネットニュースやネット活動が殺されるとかないでしょ」と放置してしまってきたからですよね。
昔からネット民は敵にすると恐ろしいが味方にすると頼りないと言われてきましたが、マジ頼りねえ。
NHKのネット活動が完全にゼロになることはないにしても、テレビ・ラジオに関連した情報しか出せなくなるということは、テレビ番組をそのままテキスト記事にする程度で、政治マガジンに限らず感染症データ、戦争/紛争の特集などなど重要な企画が殺されていくんだと思います。本当にこのままでええんか。
読み応えのある記者独自の視点の面白いコンテンツもなくなる。
東日本大震災の時に記者が自分自身どんな気持ちだったかって書いたNHK取材ノートも素晴らしいコンテンツだったなあ。
あれも消されるか更新停止なんだろうなあ。
もしまた大きな災害とかあったときに、NHKがネットで特集組めなくてもいいんですかね。僕はイヤです。日本語インターネットからマトモな情報が減るのはイヤだ。
もう手遅れなんでしょうね。
国会提出前に炎上したりして今からでも何とかならんかなあ。